
日本一海に近い駅は?
400駅以上を訪れた経験から、いちばん海に近い駅を探してみました。
日本には9,000を超える鉄道駅があり、中には海のすぐそばにある絶景駅も数多くあります。そこで自然と疑問に浮かぶのは、その中で「海に最も近い駅はどこか?」ということ。これまで20年にわたって400駅以上の「海の見える駅」を訪れた作者の視点でまとめてみました。(2026.7公開)
なお、本稿は唯一の正解を見つけることを目的とはしておらず、厳密な検証も行ってはいません。作者の主観が中心ですので、あくまで暇つぶし、旅の参考程度にご覧ください。今後も随時加筆・更新を予定しており、異論も歓迎します。
結論
- 1つに絞るのは難しい。ホームと海岸が隣接している駅だけでも6駅ある。
- 中でも作者が体感的に最も近いと感じた駅をあえて挙げるなら、長崎県の大三東駅(ただし満潮時)。
- 愛媛県の下灘駅は「日本一海に近い駅」と称されることもあるが、少なくとも現在は当てはまるとは言い難い。
ここでの「海に近い駅」の定義
なるべく多くの方にとって違和感のない答えになるよう、作者なりの基準を簡単に定義しました。
「海」の定義
- 海面と直接連続する運河は含めます。汽水湖は除きます。
「駅」の定義
- 旅客営業を行う鉄道・軌道の駅を対象にします。貨物駅や、BRTなどバス路線の駅・停留所は除外します。
「近い」の定義
- 駅のホームから海岸(護岸)までの距離を基準にします。
- 線路も駅の一部であり、ホームより線路のほうが海に近い駅もありますが、線路と海までの距離は本稿では考慮しません。実際に降り立ったときに近いと感じられるかを重視するためです。
- 海面までの距離を基準にしなかったのは、潮汐や天候に大きく左右されるためです。ただし、駅ごとに体感が異なる点でもありますので、個別に補足します。
ホームと海岸が隣接している6駅
先の定義に則ると、ホームから海岸(護岸)までの距離の最も近い駅が「日本一海に近い駅」ということになりますが、実はホームと海岸が隣接している、つまりほぼゼロ距離といえる駅だけで6駅もあるのです。
- 大三東駅(長崎県・島原鉄道)
- 海芝浦駅(神奈川県・JR鶴見線)
- 新芝浦駅(神奈川県・JR鶴見線)
- 梅津寺駅(愛媛県・伊予鉄道高浜線)
- 青海川駅(新潟県・JR信越本線)
- 北舟岡駅(北海道・JR室蘭本線)
海までの体感距離に違いはありますが、潮汐や天候の影響が大きく、一概に優劣はつけられないため、これらの駅については「日本一海に近い駅のひとつ」と呼んでも大きな違和感はないと考えた次第です。
大三東駅(長崎県・島原鉄道)

大三東(おおみさき)駅は、波の静かな有明海に隣接した無人駅。この駅が他の5駅と違うのは、海側のホームに柵がほとんどないこと。そして、ホームと護岸が一体化していて、満潮時には海面も迫ることから、作者は「満潮時に最も海に顔を近づけられる駅」だと考えています。

ただ、大三東駅が面するこの有明海、実は干満の差が最大6メートルで日本一と言われています。干潮時には水が沖へ引き、ホームの前に遠浅の干潟が出現。特に日の出前後の干潮時は幻想的で、同じ駅とは思えない風景が広がります。

海芝浦駅(神奈川県・JR鶴見線)

海芝浦駅は、京浜工業地帯を走るJR鶴見線の終着駅。京浜運河に隣接したホームから海を見下ろせば、海面が足元に迫ります。大三東駅と違って、干満の差をそこまで感じないことから、いつ訪れても海を近くに感じやすいと言えます。海芝浦駅は東芝の事業所内にあり、一般の乗客は駅の外へ出られないことでも有名(隣接する「海芝公園」には出入り可能)。個人的には夕暮れ時の工場夜景と海のコラボレーションがおすすめです。
新芝浦駅(神奈川県・JR鶴見線)

あまり知られていませんが、海芝浦駅の一つ手前にある新芝浦駅も、ホームと運河が隣接した駅です。こちらが面するのは、京浜運河よりもさらに幅の狭い旭運河。対岸の工場も近いので、海感はあまり強くありませんが、船がときおりホームのすぐそばを船が横切るので、非日常感は抜群です。
梅津寺駅(愛媛県・伊予鉄道高浜線)

梅津寺駅は、瀬戸内海に一番近い駅。海側のホームが砂浜と隣接していて、その護岸にも直接波が打ち寄せます。1991年放送のドラマ『東京ラブストーリー』のロケ地としても有名で、白い柵やベンチの向こうに広がる瀬戸内海は心穏やかな気持ちにさせてくれます。

砂浜へは、駅を出て踏切を渡ればすぐ。2009年に休止されるまでは海水浴場でもあり、かつては近くに海の家も並んでいました。松山の中心街にある松山市駅から18分で、列車も1時間に4本ほどあるので、気軽に訪れやすい点もおすすめです。
青海川駅(新潟県・JR信越本線)

青海川駅は日本海に面する無人駅。「日本海に一番近い駅」であることは確かで、海側ホームのすぐ隣には青海川海水浴場の砂利浜が広がります。6駅のうち外洋に面するのは、ここ青海川駅だけ。海面からホームまでの高さは体感で建物2〜3階分ほどありますが、ホームへ向かって押し寄せる日本海の白波、視界いっぱいに広がる水平線は圧巻でした。

ちなみに、2017年に訪れた際には、駅の近くに少し古そうな「日本一海に“近駅”」と記した看板もありました。

北舟岡駅(北海道・JR室蘭本線)

北舟岡駅は、内浦湾(噴火湾)に面した無人駅。駅前に住宅街が広がる一方、すぐ背後には線路に沿って延々と砂浜が続きます。屋根のないホームは開放感抜群で、柵の外には波打ち際もよく見えました。ホームと護岸の間には2〜3mのスペースがありますが、体感的にはその距離を感じさせないため、「海岸に隣接」と同義としました。

伸びやかな海岸線の先に雄大な有珠山と昭和新山を望めるのも、北舟岡駅ならでは。なお、内浦湾は渡島半島に囲まれた内湾ではありますが、対岸まで40kmほど離れており、よほど視程の良い日でなければ、遠くは水平線のように見えます。
あえて1つ選ぶなら?
この6駅の中で順位を定めるつもりはありませんが、作者が実際に訪れた限りで、最も海を近くに感じられたのは、満潮時の大三東駅でした。

理由は、海側のホームに柵がなく、ホームの地面から海面までの距離も近いこと。他の駅のホームにはすべて柵があり、物理的に近づける距離に限界があります。ホームの地面から海面までの距離については、各駅で満潮に合わせて訪れたわけではありませんが、大三東駅が他の駅に引けを取らないほど近いことは感じました(あくまで作者の主観です)。
しかし、大三東駅の面する有明海は、干潮時には見事なまでの干潟が広がり、海面は一気に遠ざかります。このときばかりは他のどの駅よりも海が遠くに感じられることから、大三東駅だけが一番と言い切れないのが面白いところです。
番外編:解釈次第で候補に入りそうな3駅
田井ノ浜駅(徳島県・JR牟岐線)

田井ノ浜駅は、ホームを一歩出れば、海水浴場の砂浜という、おそらく日本でいちばん海水浴場に近い駅。例年7月中旬〜8月上旬のみ営業する、海水浴客のための臨時駅です。直結の田井ノ浜海水浴場は、西日本屈指でも水質を誇り、砂浜と澄んだ海とのコントラストはこの駅ならではの眺望。波打ち際までは50m以上歩く必要がありますが、駅から合法的に海で泳ぐまでの時間で考えれば、最も海に近い駅かもしれません。
薩摩高城駅(鹿児島県・肥薩おれんじ鉄道)

ホームから波打ち際まで直線距離でも100m以上離れている薩摩高城駅。この駅の特徴は、駅からしか行けない、いわば「プライベートビーチ」に出られること。駅からビーチへと続く遊歩道や森は、肥薩おれんじ鉄道の方が整備をしたものであり、ビーチまで駅構内と断言するのは難しいかもしれませんが、海岸のかなり近い部分まで鉄道用地であると言えそうです。
高松築港駅(香川県・ことでん琴平線)

高松城の内堀に隣接する高松築港駅。高松城はかつて瀬戸内海にも面していた日本三大水城のひとつで、実はこの内堀には今でも海水が引き込まれているのです。ホームの一部が内堀の護岸と一体化しており、足元にはフジツボも見えました。筆者が調べる限り内堀を海と言うのは難しそうですが、ホームと海水の近さなら、他の駅に比肩します。
補足:下灘駅はどうなの?

「日本一海に近い駅」というキーワードやハッシュタグでWebやSNSを検索すると、愛媛県にある非常に有名な海の見える駅、下灘駅の情報も多く出てきます(最近は大三東駅などの情報も増えたり、おそらく検索のアルゴリズムも変わるなどして、かなり薄まってはきました)。
しかし、下灘駅のホームと海の間には現在、線路と国道378号が通っています。先に挙げたホームと海岸が隣接している6駅と比較して、ホームから海岸まで距離があるのも事実。したがって、下灘駅を「日本一海に近い駅」と言い切るのは難しい、というのが本稿の結論です。

かつて「日本で一番海に近い駅」と呼ばれていた、のは事実らしい
ちなみに下を通る国道は、1935年の下灘駅の開業からしばらく経った1981年に海岸が埋め立てられて新たに敷設されたのだそう。それまでについては、
1981年に駅の海側の海岸線を埋め立てて国道が開通するまで、「日本で一番海に近い駅」と呼ばれていた。
(海が間近の駅:予讃線「下灘駅」 | February 2022 | Highlighting Japan)
かつては「日本で一番海に近い駅」としてカメラマンの間で知られていた下灘駅
(伊予市公式サイト / 下灘駅)
といったように、「日本で一番海に近い駅」で呼ばれていた過去はあったようです。なお、過去にも本当に下灘駅が他の駅と比較して海に近かったかについては検証しません(当時はインターネットもなく、全国の駅の立地情報を集めて比較するのは難しかったと思われます)。
いずれにしても、過去も現在も「日本で一番に近い駅」と誰かに伝えたくなるほど特別な眺望の駅、ということは言えそうですし、作者にとっても好きな駅のひとつです。
最後に
サイト「海の見える駅」を立ち上げてから20年が経ちますが、駅同士を比較するコンテンツを作るのは初めてのことでした。駅にはそれぞれの良さがあり、比較することにはあまり意味がないと感じていたからです。
一方で、特にこの10年ほどの間でSNSが広まり、同時に海の見える駅、中でも特に海に近い駅が、実態はともかく「日本一海に近い(唯一の)駅」として発信されてきたのを目の当たりにしてきました。もっと他にも素晴らしい駅がたくさんあるのに、一部の駅だけが加速度的に有名になっていくことへのもどかしさを感じていたのも事実です。
そこで、「日本一海に近い駅」に少しでも興味を持ってくださった方に、日本には多くの海に近い駅・海の見える駅があることを知っていただく入口になればと思い、このコンテンツを作成しました。今まで知らなかった駅のことを少しでも魅力的に感じていただければ幸いです。
