根室駅 ねむろ JR根室本線 北海道根室市(Open in Google Maps) 言わずと知れた日本最東端の終着駅、根室駅。その駅前で出会ったのは、夕日の沈む根室湾でした。東の果てなのに、西に海を望む不思議な感覚もありながら、きりっと澄んだ空と、海の向こうに浮かぶ知床連山のシルエットの美しさには思わず目を奪われました。 訪問:2024年6月 / 更新:2024年10月27日 6月のある週末、釧路駅から1両編成の快速「ノサップ」に揺られること2時間強。花咲線こと根室本線の終点、根室駅に降り立ちました。ここは日本最東端の有人駅。線路も駅のすぐ先で途切れています。ただ、最果てとはいえども海からは1kmほど離れています。根室駅からはてっきり海など見えないと思っていたのですが、ホームの端からなんと根室湾がちらりと見えることを発見。標高約30mの高台という立地と広々とした駅前通りのおかげで、建物と木々の間から鮮やかな海の青が顔を出していました。特段優れた眺望というわけではありませんが、最北の 稚内駅 と同様、最果ての終着駅から見える海には他では得られない感慨深さがあります。ホーム自体は片面だけのシンプルな造りですが、立派な上屋や広々とした構内など、ターミナルらしい風格がありました。「朝日に一番近い街」の看板をくぐって、いざ最東端の駅舎と、最東端の街を見に行きます。駅舎の内部は、自動改札機なんて一切ない、昔ながらの待合室の造り。列車の到着前後にのみ改札を行うため、それ以外の時間は基本的にはホームには出られません。このときは列車が発ったばかりのために物静かでしたが、列車の出発前はきっと賑わうのでしょう。そんな待合室の中からも、ガラス越しにごくわずかながら海が見えました。駅舎は水色が印象的な平屋。1959(昭和34)年に建て替え られたもの。駅舎にはそば屋「北然仁」が併設されており、花咲名物のサンマやカニを使ったそばを頂けるそう。なお、根室駅に売店はありませんが、昼間の一部列車の出発前には 弁当の販売 もあります(一部要予約)。海鳥たちが迎える根室駅前。根室駅は海寄りにある街の中心部からは少し離れていますが、そばにはスーパーや鮮魚店、レストラン、観光協会などがあり、不便さはありません。駅前通りの先に続く根室湾をもう一度見ると、80kmほど離れた知床半島の山々がうっすらと見えました。6月ながら気温が10度前後だったこの日。空気も澄み渡り、この上ない好天でした。青空の下、駅前では八重咲きのツツジが満開を迎えていました。駅前通りの先にある国道44号を越えると、そこかしこに海へと続くまっすぐな坂道が。整然とした区画の並ぶ北海道ならではの光景です。ちなみにこの後、市街地からバスに乗り、隣にある日本最東端の駅・東根室駅 を訪れました。根室駅前に戻り、先ほどホームから見た線路の終端の裏側にも行ってみました。「根室本線終点」の看板が置かれており、JRの北・西・南端の終着駅への距離が書かれています。ちなみに、最北端の 稚内駅 に加え、最西端の 佐世保駅 も海の見える駅です。せっかく最果ての街に来たなら、最果ての地まで訪れたくなるのが人の性。ここからは駅を一度離れ、本土最東端の納沙布岬へ向かう 根室交通・納沙布線 のバスに乗り込みます。以前、稚内駅から最北端・宗谷岬を訪れた際のバスは超満員だったのですが、今回はまさかの乗客2名で出発。市街地を抜けると、乗客はついに私だけに。車窓には間もなく、荒涼な景色と太平洋が見えました。太平洋は駅から見えた根室湾とは、半島を挟んで反対側の海。幅5km足らずの根室半島の細長さを感じさせます。いくつもの立派な漁村を抜け、40分ほどで終点の納沙布岬バス停に到着。背の高いタワーは長らく休館中の「望郷の塔(オーロラ・タワー)」。本土最東端・納沙布岬の碑。海の先には約40km離れた国後島がはっきりと見えました。ときおり車で訪れた観光客が記念撮影をしていましたが、実はここが本土最東端の地点ではありません。歩いて支障なく到達できる本当の最東端が、写真右の納沙布岬灯台(さらに言えばその裏側にある野鳥観察舎)。ちなみに、写真左にごく小さく写っている灯台は、最も近い北方領土・貝殻島 のもの。納沙布岬からの距離はわずか3.7kmですが、ロシアが実効支配をしています。納沙布岬発の最終バスで根室市街地に戻り、喫茶店「どりあん」でご当地グルメのエスカロップを頂いた後、再び根室駅へ。19時過ぎ、釧路行きの最終列車が発つと、駅前はしんと静まり返りました。振り返れば、根室湾の上に、雲ひとつないマジックアワーの夕焼け空。思わず息を呑みました。最東端の駅前なのに、見える海は夕日の沈む西の方角にある、というのは不思議なものです。再び海の見える坂道へ。わずかに残る光にぼんやりと明らむ海面の先に、これでもかとくっきり浮かび上がる知床連山の稜線。これまで出会った夕暮れでも指折りの美しさでした。日没の早い最東端の街ながら、意外にも20時過ぎまで空にはグラデーションが残っていました。しかし、その翌朝3時半過ぎには眩しい朝日で起床。6月という時期もありますが、夜の短さは意外でした。訪れにくい最果ての地だからこそ、訪れて初めて感じることの多さを実感しました。