眼前にはただ、足元から広がる錦江湾と桜島の大パノラマ。そんな絵に描いたような、日本でも屈指の眺望を味わえる無人駅が、2025年3月に誕生しました。鹿児島中央駅からわずか2駅の場所にある、仙巌園駅。駅名の由来にもなった薩摩・島津家の大名庭園の最寄り駅でありながら、庭園に勝るとも劣らない眺望を誇ります。なお、秋から早春の早朝、桜島越しに日の出を拝めるのはここだけの話です。
仙巌園駅
せんがんえん

- 鹿児島中央駅からわずか8分。近代的な電車を降りるやいなや、錦江湾(鹿児島湾)と桜島が迎えてくれました。なお、隣も桜島を望む 竜ケ水駅 です。
- 訪れたのは10月下旬。雄大な海と桜島を覆うように、鱗雲が視界いっぱいに。電化路線のため架線はありますが、架線柱は山側に立てられており、視界に余計なものはほとんど見えません。
- 説明するまでもない圧巻の大パノラマ。数ある海の見える駅の中でも、指折りの眺望です。新しい駅ながら、以前からあったと思われる石造りの岸壁が活かされて、趣も感じます。
- 桜島までは直線距離でわずか3kmほど。海沿いの集落や湯之平展望所(写真右)もはっきりと視認できます。昇り続ける噴煙の迫力も十分伝わってきました。
- 伸びやかな景色とは対象的に、ホームの背後を通るのは車の絶えない国道10号。ロードサイドにコンビニやファミレスもあり、まだ鹿児島市街であることを感じさせます。
- 駅の南に広がる砂浜は「磯海水浴場」。海水浴シーズンではありませんでしたが、多くの人が穏やかな波の上でウィンドサーフィンを楽しんでいました。
- 南のさらに遥か遠くに目を凝らすと、50kmほど離れた「薩摩富士」こと開聞岳の稜線を発見。桜島と開聞岳を同時に見られるのは、予想外でした。なお、この日の夕方には霞んで見えなくなったので、開聞岳が見える機会は限られそうです。
- 国道を渡った先にあるのが、薩摩藩島津家別邸の大名庭園で駅名の由来にもなった「仙巌園」(写真右が入口)と、博物館の「尚古集成館」(写真左)。鹿児島を代表する観光地のひとつでありながらも交通手段に乏しかったことから、仙巌園駅が設けられたという経緯があります。ありがとう、島津家…
- 休日の昼間に訪れましたが、観光地の玄関口ゆえ、鹿児島中央を結ぶ列車が到着すると10〜20人ほどが常に乗り降りしていました。多くが国内外の観光客の様子。降りる人の多くは景色を写真や動画に収めるものの、その後すぐに仙巌園のほうへ向かっており、駅そのものが目的地になっているようではありませんでした。
- 近代的な電車だけでなく、国鉄色の気動車キハ40にも遭遇。特急「きりしま」も通過したりと、様々な列車に出会えます。
- 列車が去って静かになった後のホームを抜け、無人の改札越しに。ダークな色調の屋根でトリミングされた風景もなかなか。ICカードの改札機には塩害対策か、カバーが掛けられていました。
- 都市感すらある駅と、海と噴煙立ち昇る活火山との対比。念のためですが、合成はしていません。
- 桜島と本土を結ぶフェリーがひっきりなしに行き交う様子も観察でき、列車の待ち時間も見ていて飽きません。ただ、ホームにベンチが一切ないのは残念でした。
- 階段を降りて、ようやく駅の外に出てみたいと思います。
- 重厚な上屋だけで駅舎も壁もない仙巌園駅。そのシンプルな外観のおかげで、駅越しに桜島をはっきりと見ることができます。
- 開業と同時に整備された駅前広場も広々としており、桜島と青空を引き立たせていました。
- 駅前には、仙巌園と集成館の立派な説明板も。
- 駅前の信号を渡るとまず目に入るのが、尚古集成館。きれいな建物ですが、1865年に機械工場として建てられた、現存する日本最古の洋風工場建築物だそう。
- 尚古集成館のすぐそばにあるのが、国の名勝・仙巌園 の入口。江戸時代、島津藩の別邸として造られた大名庭園で、園内にある「旧集成館反射炉跡」は、2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界文化遺産にも登録されました。
- 次の列車まで少し時間があったので、急ぎ足で園内を散策。錦江湾と桜島を借景にした園内は壮観でした。食事処や土産物店もあり、心惹かれましたが時間切れ。列車待ちで訪れるにはもったいないくらいの場所でした。
- 駅に戻ると、鱗雲はいつの間にかなくなり、稜線と噴煙がくっきりと。ホームに駅前、仙巌園からと、この上ないほど、桜島の情景を満喫できました。
- あまりに素晴らしい眺望だったので、翌朝の日の出前に眠い目をこすりながら再訪。昼とは打って変わって、列車が来ても乗降はありません。
- ホームから見て海は南東向き。9月から3月頃までは、桜島の向こう側に日が昇ります。静謐な錦江湾と、今にも顔を出しそうな太陽の光に照らされた桜島のシルエットは朝だけの絶景です。
- 朝7時。空を駆けるようなドラマチックな雲とともに日の出。昼と朝、どちらも忘れがたい景色に出会うことができました。






















