日生駅 ひなせ JR赤穂線 岡山県備前市(Open in Google Maps) 瀬戸内海の島々を背景に、港に入るフェリーと、駅に滑り込む列車のツーショット。旅情を詰め込んだ一幕に出会いました。フェリーが向かう先は小豆島。ここ日生駅は長年その玄関口の一つでしたが、2023年12月からの航路の休止が決定。この景色に再会できることを願い、海の見える駅から惜別の船旅です。 訪問:2023年9月 / 更新:2023年10月3日 岡山駅から赤穂線の普通列車でおよそ1時間。赤穂線は海に近い場所を走る路線ながら、海の見える駅はここ日生駅だけ。周辺も山が迫る険しい地形です。駅に降りてすぐ目に飛び込むのが、かわいい「ひなせ」の植木文字のある楯越山。駅と山の間には日生港がちらりと見えますが、楯越山は島ではなく、地続きにあります。ホームの播州赤穂寄りまで行くと、瀬戸内海越しに楯越山と、鹿久居島(写真左)を一望できます。ホームの真ん中あたり、屋根のある場所からも、ベンチと上屋越しに港の風景。日生港ではクルーザーが数多く停泊していたり、ときおり水上バイクが横切ったり。ちょっぴりリゾート感がありました。階段で線路をくぐり、海側のホームへ。白い上屋の柵と骨組みが格子のようでおしゃれです。日生港には瀬戸内の島々を結ぶ船も発着します。小豆島行きのフェリーがそのひとつ。その船着き場も駅の目と鼻の先。日生駅は小豆島の玄関口でもあるのです。写真右上の奥に薄っすらと浮かぶ稜線が小豆島。 日生港と小豆島を結ぶフェリー は一日4往復、所要時間は約1時間です。しかし、輸送客の減少や燃料価格の高騰などが影響し、残念なことに2023年12月からの運航休止が決まりました。ホームを下りて改札へ。駅舎へとつながる通路の三角屋根と骨組みの曲線が印象的です。2019年から無人駅になりましたが、2021年には観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボァ)」が岡山〜日生でも運行され、駅の各所にその横断幕がありました。駅前にはマンションなど背の高い建物もあり、街らしい風景です。タクシーも待機していたりと、いわゆる無人駅の風情ではありません。周辺には日生名物「カキオコ」の店など飲食店も豊富。大きな窓面とアーチ状の入口が特徴の、平屋の駅舎。出口の正面ではないものの、駅の向かいには港がちらり。吸い寄せられるように岸壁に向かえば、足元から広がる港町の風情。大生汽船「日生駅前港」の小さな桟橋からは、付近の日生諸島を結ぶ一部の便が発着します。ただ、多くの便は楯越山の先にある、駅からは徒歩10分ほど離れた「日生港」がメイン。午前10:20過ぎ。再び駅のホームに戻ると、小豆島からのフェリーが入港。ちょうど列車の時間と重なり、貴重なツーショットに出会えました。カーフェリーだけあって存在感は十分。ここまで間近に接岸する船を眺められる駅はそう多くありません。しかし、この風景も間もなくいったん見納めです。ホームに向けて掲げられた「小豆島へ最短ルート」の看板も、どうなるのか。日生駅の2軒隣にある瀬戸内観光汽船の営業所で乗船券を購入し、一路、小豆島へ。海から見る日生の街並みは新鮮でした。船内は家族連れや一人旅を楽しむ人で半分ほどの席が埋まり、明るいご婦人が立つ売店も活況。休止後、遠くないうちにこの情景がまた蘇ることを願いながら、小豆島の大部港へと降り立ちました。小豆島に鉄道はありませんが、実はまだ駅を巡る旅路の途中です。この続きは、こちら。