草原の先にまた、果てしなく続く海原。どちらを向いてもまっすぐに伸びる線路。北海道ならではの空の広さが、山崎駅にはありました。ホームから見えるのは噴火湾。波は穏やかながらも、風がダイレクトに吹き抜け、ときおり体が震えます。乗客は1日3人以下で、周囲には建物もまばら。しかし、駅のすぐ隣にはなんと立派な洋食店が。熱々の食事とともに、贅沢な列車待ちです。
山崎駅
やまさき
- 4月下旬の夕刻、1両編成のディーゼルカーで山崎駅に下車。降りるやいなや、広く澄んだ空が視界いっぱいに広がりました。
- ホームの向こうには、太平洋は噴火湾(内浦湾)の水平線。噴火湾を望む駅は数多くありますが、山崎駅は湾口を望む位置にあるため、対岸は見えません。
- 山崎駅から海岸までの間には原っぱが続き、容赦なく海風が吹き付けてきます。海こそ近いですが、平原にぽつりと佇んでいるような感覚です。
- 札幌と函館を結ぶ特急「スーパー北斗」が停まる八雲駅からは1駅の場所にあります。ちなみに、山崎駅のある八雲町は 日本で唯一、太平洋と日本海の両方に面した自治体 です。ただ、日本海側には鉄道路線はありません。
- ホームの広さといい、空の広さといい、このスケールはやはり北海道。
- まっすぐと伸びた線路の先に立ちはだかるのは、砂蘭部岳(984m)などの山々。
- 寒い海風をしのぐために駅舎へ。カラフルな椅子と除雪用具がやや窮屈そうに置かれています。やわらかな西日が差し込み、レトロな木造駅舎がより映えていました。
- 振り返れば、ガラス越しに海を一望できます。山崎駅は、平均乗車人員が1日3人以下 の無人駅。誰もいない空間で、風を切る音だけが響いていました。
- それでも、ちゃんと駅ノートはありました。
- 一休みして、いざ駅の外へ。駅舎は外から見ると、赤い屋根の可愛らしいものでした。駅前には砂利の広場が広がっています。
- トイレは別にあるようです。
- そして何より山崎駅に降りて驚いたのが、現役のレストランがすぐ脇にあること。「キッチン アウル」という洋食のお店で、定休日こそあるものの、昼から夜まで営業しているようです。
- 駅前を横切るのは、国道5号線。その向こうには燃えるような夕日が落ちていきます。この40km先はもう日本海です。
- 国道もひたすらまっすぐに伸びています。
- 国道を越えても建物はまばらで、荒涼とした平原が広がるばかりでした。
- いよいよ日が沈んで影も消えると、いっそう肌寒くなってきました。
- 特急こそひっきりなしに通過しますが、山崎駅に停車する普通列車はまだ1時間後…
- というわけで、駅前の「キッチン アウル」へ。木の温もりあふれる店内はもはやオアシスでした。入店時に他のお客さんはいませんでしたが、後から1組やってきました。
- 15分ほど待って、熱々のドリアを頂きます。至福。外界とのギャップに思わず涙が出そうになります。
- 山崎駅のホームに戻ると、月明かりが海を照らしていました。普段は日没とともに取材を終えるため、この日の夜の海はとても新鮮でした。