驫木駅 とどろき JR五能線 青森県西津軽郡深浦町(Open in Google Maps) 日本海を背景に、木造の質素な駅舎だけがぽつりと佇む。驫木駅はいつ、どこを切り取っても絵になってしまいます。特に日没からマジックアワーの情景はまるで絵画のよう。東京から最速でも6時間、列車は1日に約5往復という、決して訪れやすいとはいえない場所。それでもはるばる来てよかったと思える、唯一無二の駅です。 訪問:2012年11月、2017年5月 / 更新:2024年5月25日 驫木駅を最初に訪れたのは、2012年11月。前日に近くの鰺ヶ沢に泊まり、始発列車で午前7時に下車。線路の向こうには遮るものなく日本海が迫ります。(2012年11月)冷たい海風に、轟々という波音。車窓からも十分に海を楽しめる五能線ですが、この迫力は降りたからこそ。(2012年11月)「驫木」の由来には「波の音・瀬の音が轟き、3頭の馬も驚いた」という説もあるようですが、十分納得できる迫力です。(2012年11月)木造駅舎の中は広々。もちろん海を望めます。(2012年11月)そのまま駅前に出て振り返ると、この光景。日本海を背景に木造の質素な駅舎だけがぽつりと佇む様子は、まるで映画のワンシーン。集落からも離れているため、世界から一人取り残されたような感覚に陥りました。(2012年11月)背景に見える小さな驫木漁港に、辛うじて生活感を感じます。(2012年11月)ひとたび降りれば旅情で満腹になる驫木駅ですが、実は夕日が美しい駅でもあります。小さな無人駅なのに、ホームにわざわざオリジナルの「夕焼け暦」(手前)と「夕日時計」(奥)が置かれていました。これは再訪しないわけにはいきません。(2012年11月)というわけで、2017年5月に快晴の日を狙って再訪。(2017年5月)いつ来ても絵になります。(2017年5月)時刻は午後3時半。日没まで3時間あるため、駅前を通る大間越街道を歩いて、写真左奥に見える驫木の集落にかけて散策してみます。なお当時、駅前には一軒だけ民家がありましたが、その後更地になっています。(2017年5月)道中には、線路と駅を見下ろすポイント。この日は遠く80kmほど離れた北海道の渡島半島も見えました(写真左上)。タイミングよく快速「リゾートしらかみ」が通過。(2017年5月)こう見ると、意外に駅から海までは距離があることがわかります。(2017年5月)駅から15分ほど歩いた台地の上にある、驫木の集落。弘南バスの「驫木」停留所があり、五能線と並行する 鯵ヶ沢~深浦線 が1日4往復やってきます。(2017年5月)日本海を見下ろす集落には商店や理髪店もあり、荒涼とした驫木駅前とはだいぶ雰囲気が異なります。(2017年5月)そうこうしているうちに、間もなく日没の時刻。下車時は駅に私しかいませんでしたが、いつの間にか旅人が何組も集まっていました。話を聞くと皆さん、全国津々浦々から驫木駅の夕焼けを見に来たのだそう。(2017年5月)夕焼け暦と夕日時計も、きちんと修理・保護されて健在でした。(2017年5月)そして午後6時半、日没。雲ひとつないまっ赤な空と日本海に浮かぶ、木造駅舎のシルエット。春だというのに、まったく霞みのない、極上の夕焼けでした。(2017年5月)窓に切り取られる景色は、もはや絵画のよう。余計なものが見えないというぜいたく。(2017年5月)(2017年5月)太陽が沈んだ後も刻々と色を変えながら、広い空いっぱいに澄み渡るグラデーション。これまで数々の海の見える駅で夕焼けを見てきた中で、最高の光景でした。(2017年5月)はるか頭上では、月が煌々と。(2017年5月)午後7時過ぎ、マジックアワーが間もなく終わろうという頃、列車がやってきました。この写真は 書籍『海の見える駅』の巻末にも掲載しています。(2017年5月)夕日を見ていた人もまばらになった午後7時半。カメラを仕舞おうとしたところ、頭上に無数の星を発見。街から遠く離れた驫木駅は、星空の美しい駅でもありました。(2017年5月)暗闇に波音だけが響く中、いよいよ帰りの列車を待ちます。朝から夜まで唯一無二の光景を見せてくれた驫木駅。訪れるのは大変ですが、それでもまた来たいと思える素敵な駅でした。(2017年5月)