雲ひとつない夕焼け空に、草原を思わす一面の畑、そしてぼんやりと霞む海。一日の乗客がわずか2人という白沢駅。そのホームからひとり眺める景色は、郷愁に満ち溢れています。いよいよ日の入りを迎えようという瞬間、静寂に踏切の鐘が響き渡り、ヘッドライトを灯したディーゼルカーがやってきました。
白沢駅
しらさわ
- 九州最南端の終着駅・枕崎駅から2駅の白沢駅。住宅と畑に囲まれた立地ながら、1日あたりの乗客はわずか2人。
- 訪れたのは2017年4月下旬の、日の入り間近。緩やかにカーブした線路は西日を受け、くっきりと線を描いていました。草の伸びたホームには、上屋のあるベンチが佇むのみ。待合室もトイレもありません。
- 列車は1日6往復。6時間近く列車の来ない時間帯もあります。
- ホームの先端まで行くと、視界が開け、一面の田畑と枕崎の山々を一望できます。
- 枕崎駅のはるか向こう、耳取峠 そばの山上にはいくつもの風車。
- 田畑の先には、わずかに青色を残した東シナ海。一面の緑が海岸の崖へと緩やかに下っていくさまは、まるで草原のようでした。
- 白沢駅から海岸までは約700m。駅の標高は26m。この距離感が開放的な景色を生み出しています。隣の 薩摩板敷駅 も同様に、畑と海を見下ろす駅です。
- ホームを降りて、駅前の踏切に出てみます。
- 草の生い茂る線路。この6km先はもう、九州最南端であり、鉄のレールを走る鉄道としては日本最南端の終着点です。
- 駅前の踏切を通る細い道は、実は県道。白沢駅のそばには住宅が点在しており、この坂を下った先、海沿いには集落があります。道の先には既に海がちらり。
- 一方の山側には国道226号線が通ります。500mほど北にはかつて 枕崎空港 がありましたが、現在はヘリポートとメガソーラーになっています。駅周辺には生活感こそありますが、商店や飲食店も見当たらなければ、誰かと出会うこともありませんでした。
- いよいよ日の入りを迎えようという頃。静寂の中、踏切の鐘が響き渡りました。澄み渡る空のグラデーションに後ろ髪を引かれつつ、白い列車に揺られ一路、鹿児島市街へと向かいます。鹿児島中央駅までは約2時間半の道程です。