白井海岸駅 しらいかいがん 三陸鉄道リアス線 岩手県下閉伊郡普代村(Open in Google Maps) 森とトンネルに囲まれたホームにひとり降り立つと、そこはまるで山間の秘境。第一印象は明らかに「山」ですが、振り返ると太平洋が谷間から顔を出しました。おそるおそる山を下れば、海底まで見えるほどの美しい漁港。辺りには店も集落もありませんが、山の風情と海の風情を存分に味わえる、ぜいたくな駅でした。 訪問:2016年2月 / 更新:2022年3月13日 三陸鉄道の開業後、バス路線の縮小に伴って新設された という白井海岸駅。2018年の乗降客数は1日あたり3人で、三陸鉄道では最少のようです(参考)。もちろん、このとき下車したのも私ひとり。訪れたのは、2016年2月。辺りは急峻な山に囲まれ、冬でなければ獣すら出てきそうな雰囲気ですが…駅名の通り、ホームからは谷の先に太平洋を望めます。海岸までの直線距離は200mほど。山と海の風情を同時に楽しめる、ある意味ぜいたくなロケーションです。まったく人の気配がない中、1台の軽トラックが山を降りていきました。駅の両端がトンネルなのも、ひっそり感を助長します。ところで、駅名標に書かれていたキャッチフレーズは「ウニの香り」。近くの海岸がウニの産地のようです。周辺図に紹介されているのは海岸のほか、5kmほど離れた 鵜鳥神社 と 自然休養村「緑の村」のみ。国道45号までも800mほど歩かなければいけません。駅には簡易トイレこそありますが、看板や駅舎はありませんでした。駅前はすぐに山道。商店はもちろん、民家もまったく見当たりません。帰りの列車に乗り遅れないよう時間を確かめて、海のほうへ。落葉していることもあり、道中からも海がよく見えました。この道は「みちのく潮風トレイル」野田村~普代村北部ルートの一部になっています。道端には、使われているのかわからない漁具に…錆びたボートも。なかなか自由です。道の隣には小さな沢が流れています。沢と海の組み合わせ、新鮮でした。少し下ると、一気に視界が開けました。白井漁港です。磯の形を活かした漁港で、海岸には自然の岩肌が残された箇所も。松に覆われた大きな岩も趣があります。それにしても、海水は目を見張るほどの透明感。この日は気づきませんでしたが、遠巻きにウニも見える とか。ボートが何艘も並べられ、そこそこ大きな港のようです。とはいえ、他に人の暮らしを感じさせるものは一切ありませんでした。この南側には、力持海岸と呼ばれるエリアもありますが、集落などはなさそう。静かな波を立てながら、漁船がちょうど戻ってきました。駅にはなかった人の気配に、少し安心します。帰りの列車の時間に合わせて、再び駅のホームへ。僅かな時間でしたが、軽いトレッキングをした気分。隣の 堀内駅 もよく海の見える駅なので、新緑や紅葉の季節にひと駅歩いてみてもよさそうです。