新地駅 しんち JR常磐線 福島県相馬郡新地町(Open in Google Maps) 震災の津波による駅舎の流出を経て、約300m内陸のかさ上げされた土地に移設された新地駅。その新しい跨線橋には大きな窓があり、太平洋の水平線が広がります。復興に向けて一から作り上げられた「観海タウンしんち」という街の名前を象徴するような景色でした。 訪問:2022年4月 / 更新:2023年3月11日 常磐線では福島県最北の駅である新地駅。2011年の東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けながらも(参考動画・記事)、2016年12月には新しい場所で営業を再開しました。新しい駅は旧駅から内陸に300mほど移設され、海岸からはおよそ700m。ホームから海の様子は見えません。しかし、跨線橋の階段に登ると、小さな窓越しに少しずつ太平洋が顔を出します。さらに階段を登りきれば、跨線橋には珍しい、足元から天井までの大きな窓。水平線がしっかりと見えました。新地駅周辺は震災後に4mほどかさ上げされており、海をより見下ろす形になります。駅のすぐ裏の土地は農業生産施設となる計画ですが、2022年の訪問当時はまだ、仕分けされた瓦礫が積まれていました。跨線橋からは海だけでなく、辺りの街を見渡すこともできます。こちらは南の原ノ町方面。左手のドーム状の建物は「新地駅前フットサル場」です。一方、北の仙台方面。左手には2019年にオープンした真新しい「ホテルグラード新地」が存在感を放ちます。そして、海とは反対側にも大窓があり、こちらからは駅前広場を見渡せます。正面の建物は「新地町文化交流センター(観海ホール)」。日没直後に訪れたため、西に連なる山の向こうには夕焼けが広がっていました。跨線橋を降りた先、山側に駅舎があります。時間限定ではありますが、係員のいる有人駅(簡易委託駅)です。駅を出ると、そこは広々としたロータリー。「観海タウンしんち」として整備されたエリア一帯はすべてが新しく、まさにニュータウン。新地駅にはときおり人が行き交っていましたが、ロータリーには送迎の車がたまに訪れるのみで、閑散としていました。駅前からまっすぐ山のほうに進んだ先には、新しい住宅地も。隣り合う水田は、マジックアワーの夕焼け空を写していました。駅の海側にはフットサル場のほか、駅周辺の施設に熱電供給を行う「新地エネルギーセンター」もあります。視察に訪れる方向けか、エネルギーセンターから供給されるエネルギーのルートを辿れる案内表示。バス停ではありません。駅前にはその他、地元の飲食店がテナントとして入居する「観海プラザ」があります。ちなみにホールの名前にも冠された「観海」の名はかつてこの地にあった、1875(明治5)年に開校した、福島県で最も古い共立学校「観海堂」に由来するようです(参考)。観海堂の建物 は東日本大震災の津波で消失し、現在は跡地を示す看板が残ります。いよいよ夜を迎えた観海プラザ。提灯の向こうから賑やかな声が響く中、街を後にします。駅の明かりが、跨線橋の大きな窓を一層際立たせていました。