下灘駅 しもなだ JR予讃線 愛媛県伊予市(Open in Google Maps) 松山駅から普通列車に揺られ、およそ1時間。ホームにぽつりと佇むのは、古びた上屋とベンチ。何一つ遮るものがない、瀬戸内海の眺望。下灘駅にあるのは、唯一無二のフォトジェニックなロケーションです。日中は紺青、たそがれ時は茜色に染まる視界。そして地元の方が育てた四季折々の花たち。いつ訪れても心ときめく情景が迎えてくれます。数々の映画やドラマのロケにも使われ、今や日本一有名な海の見える駅と言っても過言ではありません。 松山駅から普通列車で約1時間。本数は1〜2時間に1本。無人駅。 訪問:2017年1月、2017年2月 / 更新:2017年7月17日 松山駅からこの小さなディーゼルカーに揺られて、下灘駅へ。海と同じきれいな水色の列車でした。この三本足の上屋が下灘駅のトレードマーク。青いベンチは特等席。ホームは北西を向いているため、昼間でも逆光になることがなく、青々とした海を眺めていられます。手前に架かる橋のような道は、かつてそこに線路があった名残。下灘駅のホームには、地元の方が育てた花々。駅舎に一歩入ってもこの眺望。青春18きっぷのポスター にも使われた構図です。写真左に見えるのは、猫の島としても有名な 青島。駅舎の隣にはひっそりと「らぶらぶベンチ」なるものが。こちらも海向きですが、見る限り人気なのは、ホームの青いベンチのようです。駅舎の待合室には「駅ノート」がずらり。2017年1月の時点で、累計30冊以上。老人会の方が丁重に管理していました。待合室も手入れがされ、生け花や写真で彩られています。下灘駅のロケ年表もあり、一番古い記録は、昭和30年代の映画「渡り鳥」シリーズだとか。その後も「HERO」など数多くの映画やテレビ番組に登場しました。小さな平屋建ての下灘駅の駅舎。今こそ無人駅ですが、有人駅だった頃には、地元の方が食事を差し入れたりしたのだそう。駅前の道は車がすれ違うのもやっとの幅。周辺には何件かの住宅がありますが、商店はおよそ1km西の集落までありません。駅前の道を5分ほど歩いて高台へ。八幡浜行きの「伊予灘ものがたり」が到着すると、ホームは人であふれました。ちなみに、写真中央の国道378号線はかつて存在せず、駅のすぐ下まで海が広がっていました(参考)。国道から下灘駅を仰ぐ。夕暮れが近づくにつれて、だんだんとホームが賑わいます。列車よりも車で訪れる人のほうが多く、駅前の道には数十台の車が列を成していました。駐車スペースは駅舎横の4〜5台分のみ。「地元の若い人は車が停めにくいと不満を漏らすこともある。でも、年寄りにとって話す相手が増えたのは嬉しいね」(地元の方談)。「伊予灘ものがたり」は1日2往復。大勢の人に見送られながら、西日を背に松山へ。写真を撮ったり、ぼんやりと景色を眺めたり。限られたベンチを譲り合いながら、思い思いの時間を過ごします。たそがれ時は、海の見える駅のラッシュアワー。視界いっぱいの夕焼けが広がります。毎年9月には、この下灘駅のホームで「夕焼けプラットホームコンサート」が開催されます。このときは2月。夕日は西の漁港の先に沈んでいきました。夏場には駅のほぼ正面に、一方で11月〜1月頃は山の影に沈みます。およそ60年にわたって駅前に住むという方によると、「秋のうろこ雲と一緒に見た『だるま夕日』は、未だに目に焼き付いている」ほど美しいそう。日の入りを迎えると、人はまばらに。でも、マジックアワー はこれから。線路が薄暮のわずかな光を反射して、光の道を描き出します。刻々と変わりゆく空のグラデーションには思わずうっとり。いよいよ夜を迎えたホームに、小さなディーゼルカーが滑り込みました。翌朝、もう一度下灘駅へ。駅前でぷかぷかと浮かぶ小さな漁船。これもまた下灘駅ならではの情景です。