柴山駅 しばやま JR山陰本線 兵庫県美方郡香美町(Open in Google Maps) 城崎温泉駅から普通列車で約25分。ここ柴山駅は、山陰本線の起点・京都駅を発って初めて海を望む駅。ひっそりとした佇まいのホームの眼下には、リアス海岸の生み出した天然の良港である柴山港が広がります。港で揚がるカニが名物のこの地は、温泉旅館や民宿も数多く点在。駅の外も散策しがいがありました。 訪問:2022年5月(一部2016年10月) / 更新:2024年11月11日 5月初旬、朱色のディーゼルカーから柴山駅に下車。カーブしたホームの眼下に柴山港と柴山温泉の街並みが見えました。一方で、すぐそばには山が迫るリアス海岸らしい地形。2両編成の列車が持て余すほど長いホームが、谷間に沿って伸びています。写真奥の城崎温泉寄りには、かつての貨物ホーム跡も残っていました。海側のホームは2001年には使われなくなったそう。立ち入ることはできませんが、古びたホーム越しの海が絵になります。幹線道路からも遠く離れているため、建物の多さの割にはとても静かです。目を凝らせば、「柴山がに」と書かれた漁港の建物。柴山港で水揚げされる松葉ガニは「日本一厳しい選別基準がある」ともいわれる名物だそう。視点を変えれば、湾口、そして日本海の水平線もちらりと見えました。ちなみに、現在のホームに上屋はなく、駅舎もコンクリート製の小さなものですが…2018年までは木造駅舎と一体になった、立派な上屋がありました。(2016年10月)かつて駅員さんが立っていたであろう、改札口からの景色もまた旅情たっぷりでした。(2016年10月)現在はレトロさはないものの、上屋がないためより開放的な眺望に。かつて待合室のベンチに座って見えた海。(2016年10月)新しい待合室からもしっかりと見えました。地元の方が置いたであろう、かわいらしい座布団も健在でした。柴山駅のホームにはひっそりと、開業日の「六月二十六日」とだけ書かれた碑があります。地元では明治末期の山陰本線開通前から駅の設置を陳情していたそうですが、開業したのは戦後。長年の悲願だったゆえに残されたもののようです(参考)。2020年から使われている、柴山駅の新しい駅舎。この左手にある トイレよりも小さい と話題になったこともあるよう。旧駅舎は横に長い平屋。暖色の塗装が印象的でした。(2016年10月)旧駅舎の入口越しに見えた柴山港。(2016年10月)新しい駅舎越しにも、ほぼ同様に見ることができました。周辺を散策すべく駅を出ようとしたら、いきなり立派な旅館「かに楽座 甲羅戯」が目の前に。奥まった場所にもう一軒の旅館「山水苑」がありますが、駅前にそれ以外の建物はほとんどありません。駅前の坂を下ると「かにかに民宿村」という看板。進んでみると、細い路地に沿って黒い瓦屋根の家々がみっちり立ち並び、趣ある民宿もいくつかありました。カニのシーズンではない時期に訪れたためか、観光客はほとんどいない様子。ただ、地元の老父が気さくに話しかけてくれました。通りの電灯も暖かみのある色と独特の形。路地の間からはところどころ海。吸い込まれるように海岸に出ると、小さな砂浜に行き着きました。奥行き約2kmという柴山港。ほとんど波も立たず、非常に穏やかでした。そしてここにも「かにの里」の植栽文字。狭い湾口には赤と白、2つの灯台。快晴の空と澄んだ海の青と相まって、鮮やかでした。柴山駅へと戻る途中、街からも駅を発つ列車がちらり。山に近いこともあってか、ホームの下には清流も流れていました。あっという間に帰りの時刻。駅の周りも趣にあふれた柴山駅。今度は冬に、カニと海の景色を目当てに泊まりに来たいものです。