尺別駅 しゃくべつ JR根室本線 北海道釧路市(Open in Google Maps) *北海道の尺別駅は 2019年3月に廃止 されました。記載の情報・写真は訪問当時のものです。 かつて付近の炭鉱まで鉄道が伸び、多くの列車や人が行き交っていたそうですが、今や駅前に廃屋が立ち並び、辺りを冷たい海風が吹き抜けます。しかし、見渡す限り一面の草原と果てしない水平線は、一人でも多くの人に見てほしい、北海道ならではの情景です。 訪問:2018年4月 / 更新:2019年4月1日 太平洋を望む尺別駅。両隣の音別駅、尺別駅にも付く「別」はアイヌ語で「川」という意味。「尺別」は「夏の川」「乾いた川」を意味するそう(参考・PDF)。尺別駅のまわり一面は草っ原。水平線は果てしなく、島ひとつ見えません。訪れたのは4月末という時期ながら、海風の冷たさは痛いほどでした。駅の山側もひたすら草原。その中を国道38号線だけが横切ります。南側の海沿いには、数件の民家が立ち並び、小さな集落を形成しています。山側にある広いホーム。実はかつてここ尺別駅からは、内陸の炭山とを結ぶ「雄別炭鉱尺別鉄道」が発着していました。1970(昭和45)年には閉山とともに尺別鉄道も廃止され、施設は撤去されましたが、この広い駅構内がその名残のようです。なお、尺別駅の直近の平均乗車人員は平均して1日に1人未満にまで落ち込んでいます(参考・PDF)。山側のホームから見た駅舎。青い屋根はピカピカでしたが、こちらから見ると全体的にレトロな風合いです。駅舎内の待合室は意外なほどきれいでした。壁には尺別鉄道が運行されていた頃の写真のほか、駅ノートもあります。駅舎の窓からも海。尺別駅の駅前風景。唯一見える小屋は廃屋でした。人の姿もまったくありません。外から見た駅舎は、意外にもモダンな外観。枯れ草の合間から顔を出すふきのとうが、遅い春の訪れを告げていました。駅の隣にあるポストでは、1日1回収集が行われるようです。駅前を通る道道361号線。車通りはほとんどありません。次の列車まで時間があるため、奥の集落の方へと歩いてみます。3分ほど歩いて道道の突き当たりまで行くと、映画『ハナミズキ』のロケ地になった家がありました。その脇には海岸へと続く、緑の未舗装路。海岸まで200mほどながら、立派な草原が広がります。草原を抜けると、砂浜に行き着きました。ここ尺別海岸はキナシベツ自然保護区に含まれるそうです。道端に咲いていた エゾエンゴサク と思しき花。草原にポコポコと顔を出す不思議な塊は、道東の春の風物詩「谷地坊主(やちぼうず)」。根室本線の車窓からもそこかしこに見られます。線路を越えて、道道361号線を歩いて少し内陸へ。道はかつての炭山の方へと続いています。振り返ると、特急「スーパーおおぞら」が踏切を軽やかに通過していきました。近くには珍しい、エミューの牧場がありました。それ以外、商店を含めて人の集まりそうな施設は見当たりません。駅に戻ると、およそ2時間半ぶりの列車が到着。広い広い草原に1両だけのディーゼルカーがぽつりと停まるさまを見て、北海道のスケールの大きさを改めて実感したのでした。