薩摩板敷駅 さつまいたしき JR指宿枕崎線 鹿児島県枕崎市(Open in Google Maps) 草生い茂る畑の中に、ぽつりと佇む駅名標。隣はもう、九州最南端の終着駅、枕崎駅です。日の入りを前にぼんやりと霞む東シナ海は、水平線をにじませながら、暮れゆく空と一つになっていました。遠く見下ろす森の向こうは、海というよりもはや空。26,000km、延々と続く鉄路の果てで、天上を思わす幻想的な光景に出逢いました。 訪問:2017年4月 / 更新:2020年4月5日 九州最南端の路線、指宿枕崎線。薩摩板敷駅があるのは、その終点・枕崎駅の一つ手前です。鹿児島中央駅からは普通列車で約2時間半。本数は1日に6往復。最果てに来てしまいました。訪れたのは2017年4月下旬の、西日の眩しい時間帯。東京では日の入りを迎えようという時刻ですが、こちらの日の入りははまだ30分後。駅舎もなく、上屋の付いたベンチがあるだけのホーム。周囲には畑が広がるばかりで、開放感は抜群。遠くにはうっすらと開聞岳も見えました(写真右)。ホームの正面、海側には、県立鹿児島水産高校 の立派な校舎。その先には東シナ海が延々と続きます。海岸までは約800m。高低差も40m近くあります。駅を出て踏切を渡るとすぐ、鹿児島水産高校の入口です。巨大な錨が置かれた校門。校舎まではなかなかの距離です。ホームの真後ろにも畑が広がり、ぽつりと立つ駅名標だけが、駅の存在を主張しています。薩摩板敷駅の山側には国道226号線が通るほか、畑と民家の入り交じる集落もあります。ただ、商店などは見当たりませんでした。日が暮れゆくにつれ、海の色もだんだんと淡くなり、空に溶けていきます。森の向こうに広がる、一面ペールブルーの世界。まるで空に浮いているかのようでした。ホームには列車待ちの高校生。通学需要からか、薩摩板敷駅はローカル線の無人駅としては珍しく、年々利用客を伸ばしています。草に埋もれた線路にはもうすぐ、終着駅で折り返した列車がゆっくりとやってきます。