大山寺駅 おおやまでら 大山ケーブルカー 神奈川県伊勢原市(Open in Google Maps) 標高512m、海岸からは15km。海沿いではなく山の中に、海の見える駅がありました。大山寺駅はケーブルカーの駅でありながら、改札のない無人駅。そのため、一般的な鉄道の無人駅と同じく、ホームで列車を待ちながらのんびりと景色を眺められます。しかも景色は、類を見ない遠望ぶり。はるか眼下の相模湾、山の織り成す自然美、いにしえから信仰を集める寺社と合わせて、心が洗われた気分になりそうです。 *空気が霞むと海まで見通せないため、冬場など空気の澄んだ日の訪問をおすすめします。 訪問:2013年1月、2021年11月、2022年12月 / 更新:2022年12月30日 大山寺駅があるのは海沿いではなく、神奈川県の名峰・大山(おおやま)。駅とはいえ鉄道だけではアクセスできず、小田急線の伊勢原駅から「大山ケーブル」行きのバスで終点まで20分ほど揺られ、さらに両脇に旅館や土産店が立ち並ぶ「こま参道」を15分ほど登ります。(2021年11月)参道の300段以上の階段を登り終え、ふもとの大山ケーブル駅からケーブルカーに乗車。原則20分おきに出発します。(2021年11月)動き始めて間もなく、大山寺駅の2つのホームと、下りのケーブルカーが目に入ります。(2021年11月)わずか2分で大山寺駅に到着。ホームに降りて振り返ると、はるか先には相模湾。標高は512m。海の見える駅では圧巻の遠望ぶりです。ただ海岸から15kmも離れているため、霞んでいると海まで見通せないこともあります。空気の澄んだ冬場がおすすめです。(2022年12月)ケーブルカーやロープウェイには海の見える駅が他にもありますが、その多くが出発直前の改札時刻までホームに入れず、 景色を眺めるのに不向きなため、当サイトでは基本的に取り上げていません。しかし、大山寺駅は無人駅。ホームにはベンチもあり、一般的な鉄道の無人駅と同じく、好きなだけ景色を眺められる貴重な駅なのです。(2022年12月)とはいえこの傾斜と階段状のホームはケーブルカーならでは。大山ケーブルカーの最大傾斜は約25度だそう。(2022年12月)ふもとの大山ケーブル駅と、山頂の阿夫利神社駅のちょうど中間地点にある大山寺駅。一本のケーブルの両端に吊るされた2台の車両が、この駅で必ずすれ違う造りになっています。そのため、各ホームには上りと下りが交互に到着。放送などによる案内もありますが、次にどちらが来るかを線路上のロープで見分ける、というのもこの駅ならでは。全国でもこの駅でしか見られないようです(参考)。(2021年11月)ホームもほどほどに、ベージュの跨線橋に登ってみます。(2022年12月)跨線橋はさながら展望台のようでした。喧騒から離れ、木が風にそよぐ音に包まれます。(2022年12月)ふもとの参道沿いの集落から、遠くは江の島、三浦半島、その奥の房総半島まで見通せました。(2022年12月)江の島までは約25km、房総半島までは約60kmです。(2022年12月)少し西に目を向けると、平塚の街並み。(2022年12月)駅にいながら、山から街、海までを一望できてしまいました。(2022年12月)ちなみに、紅葉の時期には山もいっそう鮮やかに。ただこの日は晴天だったものの、霞んで海まで見えませんでした。また紅葉の時期はケーブルカーも混雑しており、この日は上りが1時間待ちでした。健脚であれば登山道を歩いたほうが早いです。(2021年11月)大山寺駅には駅舎も待合室もなく、入口は立て看板が目印。(2021年11月)駅前には歩行者しか通れない一本道があります。(2022年12月)道の先にあるのが、駅名にもある大山寺。奈良の東大寺を開いた良弁僧正が755(天平勝宝7)年に開山したという、歴史あるお寺です(参考)。紅葉の名所でもあり、11月下旬に訪れた際も観光客が絶えませんでした。(2021年11月)階段を登った先には、本堂があります。(2021年11月)大山寺駅の脇からはもう一本、細くて急な階段が伸びています。(2021年11月)道の先にあるのは、世界平和を祈り建立されたという「十一面観世音菩薩」。(2021年11月)そして、江の島を望む位置に建てられた「幸福の鐘」。大山を男神、江の島を女神と見立てて両方に参詣したという、かつての二所詣に由来するそう。甲高い鐘の音が、ときおりホームにも届いてきました。(2021年11月)大山寺駅まで訪れたら、合わせてケーブルカーの終点・阿夫利神社駅に訪れるのがおすすめ。大山寺駅の周辺にはない売店や食堂もあって、にぎやかです。(2021年11月)大山阿夫利神社へと続く標高およそ700mの階段からは、大山寺駅以上に広い視界で平野と海を一望できます。古来から信仰の対象だった大山。いにしえの人々もこんな景色を見たのでしょうか。(2021年11月)階段の先に立派な社がありますが、こちらは下社。本社は標高1,252mの山頂にあり、下社脇の登山道(写真左)から険しい山道を登って行く必要があります。(2022年12月)なお、下社から見て海は東向き。大山阿夫利神社は初日の出スポットでもあります。元旦にはケーブルカーも早朝から臨時運行され、初詣と合わせて初日の出を見に多くの人が訪れていました。ちなみに、大山寺駅からの初日の出はぎりぎり山の陰に沿って見えると思われます。(2013年1月)帰り道、こま参道を抜けてバスロータリーの手前からも海がちらり。大山寺駅は道すがらふらっと立ち寄れる場所ではありませんが、そのぶん山の自然美や歴史ある寺社と合わせて、数々の非日常に出会える場所でした。(2022年12月)