根府川駅 ねぶかわ JR東海道本線 神奈川県小田原市(Open in Google Maps) 崖の上に佇むパステルカラーの木造駅舎は、築100年。その背景には水平線が分けた海と空の青だけが広がります。駅前には、3月に盛りを迎えた鮮やかなピンク色のオカメザクラと、4月頃に花開くソメイヨシノ。夏になれば、ホームのそばで紅がまぶしいカンナの花も咲くのだそう。さらに、元旦にはホームの正面に初日の出も。東海道本線でも希少な無人駅は、一年を通して絶景にあふれる駅でした。 訪問:2022年3月(一部2012年4月、2009年1月) / 更新:2024年3月3日 東京駅から東海道本線で約1時間半。小田原駅を過ぎ、左手に視界いっぱいの相模湾が広がると間もなく根府川駅に到着します。屋根がほとんどなく、長く開放的なホーム。そんなホームがあるのは、標高約45mの崖っぷち。フェンスの向こうには水平線しか見えませんが、はるか崖の下には国道135号が通ります。フェンス越しに南を向けば、真鶴半島も。(2012年4月)3月中旬に訪れた際、駅前ではちょうど名物のオカメザクラが咲き誇っていました。後ほどお花見へと参りましょう。改札へ続く、年季の入った跨線橋。窓の向こうから海と空の青い光が差し込みます。階段を登り切ると、オカメザクラがこんにちは。急な崖沿いにある根府川駅は、跨線橋と駅前が同じ高さになっています。跨線橋からもこのオーシャンビュー。海からの爽やかな風が吹き抜けます。駅舎に入って振り返れば、誰もいない改札越しの水平線。実は根府川駅は、支線を除けば東海道本線で長らく無人駅だった唯一の駅。2017年に愛知県内で8駅が無人化 されて「唯一」ではなくなりましたが、1日の平均乗車人員もわずか639人(2008年度)と、スローな時間が流れていました。今でこそ穏やかな根府川駅ですが、1923(大正12)年の関東大震災では大規模な地すべりが発生。駅と列車が流され、多くの犠牲者が出ました(参考)。現在、海を望む改札のすぐそばには「関東大震災殉難碑」が置かれています。そのすぐ脇、改札口の足元には色とりどりの花。この日は咲いていませんでしたが、夏には カンナの花 が咲くそう。その様子は大正生まれの詩人・茨木のり子の詩「根府川の海」にも記されています。駅前に出ました。小さなロータリーの左にはソメイヨシノの大木、右にはオカメザクラ。正面を県道が横切りますが、崖の下を通る国道と比べれば車はまばらです。周囲には民家とJA、郵便局があるくらいで、コンビニすらありません。正面の崖に登って振り返ると、鮮やかなピンク色のオカメザクラ越しに、パステルカラーをまとった根府川駅の木造駅舎。そして背後には青い水平線。駅舎は関東大震災の翌年、1924(大正13)年に再建されたものだそう。なんと築100年を迎えます。駅前の坂道をさらに北へと進むと、ホームとひたすらに広がる大海原の景色。ここでもオカメザクラとコラボレーション。駅を出てすぐ右手にあるJAの裏にも、小さな桜並木があります。ホームから見えたオカメザクラはこちら。そして4月頃、散りゆくオカメザクラに代わって、駅前ではソメイヨシノが花を咲かせます。(2012年4月)淡い色に包まれ、まるで絵に描いたような光景が広がっていました。(2012年4月)根府川駅の見どころはそれだけではありません。根府川駅が一年で最もにぎわうのは、実は元旦の早朝。(2009年1月)根府川駅のホームは海に対して東向き。初日の出を見ようと、長いホームには多くの人々が集まるのです。かつては根府川駅で日の出を迎える臨時列車も運行されていました。(2009年1月)ちょうど元旦には、駅の真正面に太陽が顔を出します。このとき出会った初日の出の感動は今でも忘れられません。(2009年1月)駅の入口には誰がつけたのか、めでたい正月飾り。根府川駅は海だけでなく、季節ごとの花々、そして日の出と、絶景に出会うために何度でも訪れたくなる駅です。(2009年1月)