丸山駅 まるやま 神戸電鉄有馬線 兵庫県神戸市長田区(Open in Google Maps) 神戸の市街地にある新開地駅から、六甲山地を越えて内陸へと伸びる神戸電鉄有馬線。海とは無縁の路線だと思っていましたが、標高約95mのここ丸山駅から大阪湾がばっちりと見えました。駅の裏にある森を抜ければ、整地された新興住宅地。一方で、駅前の深い谷には時が止まったかのようなバラック街。予想を裏切られる光景の数々に、めったとない衝撃を覚えました。 訪問:2022年5月 / 更新:2022年12月10日 丸山駅があるのは、新開地駅から普通列車でわずか3駅、6分の場所。駅の山側には森が迫りますが…ホームの新開地寄りからは海側を見下ろすと、見事に開けた眺望。眼下には新長田駅周辺の街並みと大阪湾(瀬戸内海)が見えました。さらに跨線橋に上がると、駅から海までを一望できます。ちょうど普通列車が到着。運転席には神戸鉄道のキャラクター「しんちゃん」が鎮座していました。最も近い海岸まで4km以上離れていますが、目を凝らせば大阪湾を行き交う船、さらに湾の対岸にある和泉山脈も見えました。跨線橋から海とは反対を向くと、山の斜面にびっしりと立ち並ぶ丸山地区の家々。線路にもかなりの勾配がありますが、この先さらに標高約280mの鈴蘭台駅、約350mの有馬温泉駅方面へと駆け上がります。山側のホームからの眺望はこんな感じ。休日の夕方でしたが、人はまばら。列車が到着するたびに1〜2人が乗り降りするかしないか、といった程度でした。ホームはさながら、誰もいない展望台です。小さな改札口を抜けて、駅の外に出てみます。なお、丸山駅はゲート付きの自動改札ながらも無人駅。私もICカードのエラーで出られず一度焦りましたが、遠隔で管理されており、インターホン経由ですぐに対応してもらえました。駅前に広場やロータリーはなく、車も通れない細い道が一本あるのみ。改札を出て右手の道が、跨線橋からも見えた住宅街へと続きます。駅前には小さな商店が2つほどありましたが、この日は営業していませんでした。坂道の終点にひっそりと、丸山駅は佇んでいました。夕暮れの住宅街。古い建物が目立ち、独特の雰囲気を醸します。昭和初期には遊園地もあったという丸山地区。かつて「神戸の奥座敷」とも呼ばれたそうですが、現在は人口減少と高齢化が進んでいるそう(参考)。谷の向こうにも、急な斜面にびっしりと張り付くように建てられた家々。海と山が近い都市部ならではの光景です。日が沈む前に、いったん丸山駅へと戻ります。今度は改札を出て左の道へ。上へと続く階段と、下へと続く細い急坂に分かれていました。階段のほうは歩道橋。駅をまたぐとさらに山を登る歩道につながっており…登り切った先には、海を見下ろす新興住宅地がありました。一方の急坂を降り始めると、眼下には無秩序に並ぶバラックたち…。神戸市内の駅徒歩1分とは信じがたい光景です。見るからに朽ちた廃屋も多く、言葉に表せない衝撃を受けました。そうした中、バラックをまとめて購入し「丸山バラックリン」と名付けて「村おこし」をする活動も始まっているのだそう(参考)。そのまま谷を降りて隣駅に行けないか思案しましたが、うっそうとした竹やぶに突入し、直感的にこれ以上進めないと感じて断念(後から確認しても、抜けられる道はなさそうでした)。ただそんな道中でカップルや若い男性とすれ違ったのは印象的でした。駅に戻り、街へと運んでくれる列車の姿を見て安堵。海だけではない、強烈な印象の残った旅でした。