上田浦駅 かみたのうら 肥薩おれんじ鉄道 熊本県葦北郡芦北町(Open in Google Maps) 海と山に囲まれた、小ぢんまりとした集落。その先に見える、広大な八代海と天草の島々。跨線橋に上って初めて見られるこの景色は、車窓では味わえない、海の見える駅ならではの光景です。かつては鹿児島本線の一部で、特急も行き交っていた上田浦駅。九州新幹線の開通以降、定期の特急列車はなく、ゆったりとした時間が流れています。 熊本駅から九州新幹線「さくら」「つばめ」と普通列車で約1時間。本数は1時間に1本。無人駅。 訪問:2016年9月 / 更新:2018年2月11日 肥薩おれんじ鉄道線の起点、八代駅から4つ目にある上田浦駅。列車から独り降りると、民家の隙間から、海が顔を出していました。見えるのは 八代海 で、地図には「黄金ケ浜海水浴場」とも書いてあります。向かいの陸地は天草諸島の上島です。ホームからの眺望は全体的にそれほど良くありませんが…跨線橋に上れば視界が一気に広がり、八代海の大パノラマが出現。三方を山に囲まれ、小さな平地に集落の家々がひしめき合っている様子も覗えます。民家の瓦屋根には独特の趣がありました。遠くには船の姿。穏やかな波風は瀬戸内海のようです。遠くで踏切の音が聞こえれば、それは列車の合図。上田浦駅ではしばしば、列車のすれ違いが行われます。この時も2本同時に列車が到着しましたが、乗り降りするお客さんはいませんでした。列車はこの先もしばらく、海沿いをひた走ります。ちなみにこの線路は以前、JR鹿児島本線で、特急「つばめ」も走っていました。まさに九州の南北移動の大動脈でしたが、今では九州新幹線がその役割を担っています。賑わいこそありませんが、人の営みは確かにありました。駅で唯一出会ったお客さん。跨線橋を降りた先はもう駅の出口。三角屋根の建物は駅舎ではなく、駐輪場です。駅前には細い一本道が通るのみ。幹線道路の国道3号線からは5km近く離れており、交通量もほとんどありません。ゆえに、上田浦駅の周辺は喧騒から隔絶され、ゆったりとした時間が流れています。線路沿いを北に歩いてすぐ、海へと続く踏切がありました。渡った先は、黄金ケ浜海水浴場のはずですが…海岸は一面岩だらけ。海の家もなく、かつての写真 の面影はありませんでした。ピーク時には上田浦駅に 優等列車も停まっていた のだそう。一部には砂利浜もあり、海水も澄んでいますが、人の姿はありません。辺りには穏やかな波音だけが響いていました。