波子駅 はし JR山陰本線 島根県江津市(Open in Google Maps) かつて陶器の生産が盛んだったという波子町。列車を降りると、目の前には赤い瓦屋根の家々がずらり。その間から日本海が顔をのぞかせます。ホームからの眺めも趣がありますが、駅の裏にある「古城山展望台」からの眺めはことさら格別。絨毯のように広がる集落の赤い屋根と青い海との対比は、訪れたらぜひ一度目にしたい絶景です。 訪問:2018年11月 / 更新:2022年7月9日 波の子と書いて「はし」と読む、波子駅。山陰本線の江津〜浜田間では唯一ホームから海の見える駅です。11月の朝。江津方面へと向かう普通列車で降り立つと早速、集落の向こうから日本海がちらり。列車が去ると、ホームは静かになりました。標高20mほどの高台にあるホームでは、いたるところからちょっとずつ海が見えますが…立派な赤い瓦屋根越しの海が壮観でした。この赤い瓦は、石見地方の特産「石州瓦」。山陰本線に乗っていると、島根県から山口県にかけてよく見られますが、波子駅から望む赤い屋根の家々の数は特に多いように思えます。波子町ではかつて 陶器の生産が盛んだった というのも納得です。途切れなく重なり合う赤い屋根と、青い海のコントラスト。まもなくして浜田行きの普通列車がやってきました。石州瓦にも負けないインパクトの朱色です。ちなみに、特急「スーパーおき」の一部も停まります。駅の山側は、海側ほど民家が密集しておらず、畑も点在していました。ホームでひときわ目についたのが、この看板。歩いて8分ほどの場所に「島根県立しまね海洋館 アクアス」があるのだそう。ホームの踏切を渡り、のどかなアプローチを抜けて駅舎へ。駅舎の軒先で迎えてくれたのは、石見神楽 の演目に登場する大蛇(おろち)。そして真正面、瓦屋根の間から顔をのぞかす日本海。秀逸な「海チラ」です。全国で駅の無人化が進む中、2000(平成12)年のアクアス開業に伴って有人化し、特急停車駅にもなったという珍しい経緯をもつ波子駅。訪問当時はきっぷのほか、先述の水族館・アクアスのチケットも売っていましたが、2022年3月末をもって再び無人駅となってしまいました(参考)。波子駅の駅舎も、赤い瓦屋根でした。以前は青い瓦屋根だったものが、有人化と同時期に全面改装されたようです(参考)。静かな駅前風景。細い道路の先、一段低い場所に集落が広がります。商店などは見当たりませんが、地図や ガイドマップ を見る限り、集落の内外にゲストハウスや飲食店が点在しています。そばにはベンチや芝生も整備されていて、のんびりと過ごせます。駅前で写真を撮っていると、窓口にいた地元のご婦人が「写真撮るなら、すぐそこの展望台に行っておいで」と声をかけてくれました。線路をくぐって駅の裏側に回り込むと、小さく「古城山展望台」の文字。ちなみに「はんど」(飯銅・はんどう)とは、まさにこの文字が刻まれた水瓶のこと。石見焼を代表する特産品のようです(参考)。「はんど」の脇にある小道を抜け、赤瓦で築かれた手作りの階段で丘を登ると…一気に視界が開け、小さな古城山展望台に到着。駅からここまで歩いて5分ちょっと(展望台への道のりは こちら が参考になります)。誰もいない展望台に登ると、眼下には赤瓦の集落と澄みわたる日本海。人工美と自然美のコラボです。来てよかった、と本気で思える眺めでした。オブジェのような橋の左にある大きな建物がアクアスで、その周囲には 島根県立石見海浜公園 が広がっています。波子の集落は見渡す限り赤く、隙間なく建物が密集していて、目を見張るものがあります。山陰本線の線路も見えました。列車の時間が近づいたので、後ろ髪を引かれつつ駅へと戻ります。足元には気ままに咲き乱れるコスモスの花。穴場感たっぷりの情景に心が満たされました。