大阪府の最南端、岬町にある小さな無人駅。高架にあるホームからは、家々の屋根越しに大阪湾が見えました。終戦の前年に軍事路線として開業したという南海多奈川線。使われることのないまま残されたもうひとつのホーム、複線になるはずだった赤い鉄橋などが、夕暮れの中、哀愁を醸していました。
深日町駅
ふけちょう
- 南海本線のみさき公園駅から2両編成の列車に乗り換えて、わずか1駅。夕暮れ時に降り立ちました。
- 高架にあるホームのすぐ眼下は住宅街。遠くには工場や変電所も見えます。
- そして家々の向こうには大阪湾。淡路島の稜線もうっすらと見えました。30km以上離れた明石海峡大橋が見えることもあるようです。
- 駅から海岸まではおよそ500m。その間には2階建ての民家ばかりがびっしりと立ち並び、壮観です。
- 深日町駅は乗り場が1つの単式ホームですが、向かいにも年季の入ったホーム跡のような段差が。しかし、かつて複線だったという情報はないため、使われることのないまま放置されているよう。西日の透ける雑草と相まって、切なさを感じさせました。
- 色こそ塗り直されていますが、木造の上屋からは重厚さを感じます。なお、ホームの屋根の掛かる場所には壁があり、海は見えません。
- みさき公園方面を望むと、南海本線の列車。手前には、複線分用意された鉄橋と分岐器になっていたであろう不自然なカーブが見えました。戦時中の1944(昭和19)年、軍需工場への輸送用に開業したという多奈川線(参考)。たまたま声をかけてくれた老父曰く、「戦争がもっと続いてたら、線路がもう一本敷かれているところだったんだ」。
- その線路を景色を横目に、階段を降りて駅の外へ。
- 古びたコンクリートむき出しのアーチ橋。その陰に、手書きの駅名板の掲げられた小さな駅舎。自動改札機がありますが、レトロな雰囲気に飲み込まれていました。
- 駅前を通る府道は交通量も多く、静かな駅とは正反対の混み具合。その頭上に、先ほどホームで見た赤い鉄橋が架かります。
- 線路が敷かれずぽっかりと空いたスペースの向こうには青空。
- 近くの歩道橋からは、ホームになっていたかもしれない、そして今後もきっと使われることのない「遺構」がよりしっかりと見えました。
- この日は歩いて隣の深日港駅へ。その途中にはこんな旅館跡も発見。多奈川線沿線には、時を止めたかのような景色が点在していました。